三平方の定理・関係代名詞なしで都立高校入試はどうなる?

中学生向け

2020/6/11(木)に東京都教育委員会が、2021年(令和3年)に行われる都立高校入試の日程と配慮事項を公表しました。最も大きいのが、今年度の都立高校入試の出題範囲の減少についてです。

コロナウィルスの蔓延に伴い、学校再開が大きく遅れています。各地域ともに行事の縮小や夏休みの短縮で授業日数を確保しようとしていますが、都立高校入試においては出題範囲を減少して入試を行うことになりました。今回の範囲の減少とそれに伴う影響、今年度の高校入試がどうなるのか考えていきます。

出題範囲減少はどの分野?

まずは今回の出題範囲の減少がどの分野になっているのかを確認します。今回の発表がHPで行われています。

今回、東京都教育委員会は他の都道府県より早く出題範囲の減少を示してきました。今年度入試の出題範囲をどうするかは悩ましい問題だったと思いますが、受験生のことを考えると出題範囲を素早く提示するという対応は良かったと思います。

「入試範囲から除外=学校で学習しない」ではないので注意

念のため確認ですが、今回の発表はあくまで都立高校入試において、コロナウィルス蔓延による授業の遅れを配慮する措置になります。都立高校入試の出題範囲からは除外されますが、学校で学習しないというわけではありません。入試では出題されないというだけです。

もちろん入試で出題されないと、そこまで勉強しない生徒が出てくるのでは?という懸念は生まれるものの、授業としては中学3年間の範囲を進めていく前提となっていますので注意してください。

除外される内容一覧

さて肝心の減少される分野は以下の通りです。

教科出題範囲から除外される内容
国語中学3年生の教科書で学習する漢字
数学中学3年生で学習する内容のうち以下のもの
・三平方の定理
・標本調査
英語関係代名詞のうち、主格のthat/which/who及び目的格のthat/whichの制限的用法
※ 同様の働きをもつ接触節も出題しない。
社会公民分野の以下の内容
・『私たちと経済』の「国民の生活と政府の役割」
・『私たちと国際社会の諸課題』
理科第1分野
・『運動とエネルギー』の「力学的エネルギー」
・『科学技術と人間』
第2分野
・『地球と宇宙』の「太陽系と恒星」
・『自然と人間』

これらは内容減少の基本方針に沿って決定されています。基本方針は、中学1年・2年の内容と中学3年で学習する内容の7ヶ月程度で学習可能な分量を出題範囲としています。

各教科ごとにもう少し見ていきましょう。

国語

他の科目と異なり、決まった分野を除外するのが難しいのが国語。それなら、特に削除なしでもいいのではという気もしますが、削りやすい範囲として中3で習う漢字を出題しないという形になりました。ただ、実際の入試に向けての勉強にはそれほど影響はないと思われます。そもそも漢字の読み書きの出題は小学生で習う漢字がメインですので、漢字の問題はほぼ影響ないと見ていいでしょう。文章題で登場してくる漢字に未習の漢字が登場する可能性がなくなるくらいだと思うので、影響はほぼないと見ていいでしょう。

数学

数学は三平方の定理と標本調査が出題されません。標本調査は出題されないこともあるので、そこまで影響は大きくないでしょう。ただ、三平方の定理は影響が大きいです。基本的にどの都道府県の入試でもそうですが、三平方の定理を使わずに全ての問題が解けるというのはほぼないです。昨年の都立高校入試では大問5で空間図形の問題が出題されています。図形問題であれば、かなりの確率で三平方の定理を使って解答する問題が出てきます。そして図形問題は入試では大問としてほぼ確実に出てくます。そのため、数学は出題範囲減少の影響は大きいでしょう。2021年(令和3年)の都立高校の入試において、図形問題は出題されるとしても三平方の定理なしです。となると、考えられる可能性は2つ出てきます。1つが、図形問題を、円や相似などで解ける問題に変更とすることです。もう1つが別の単元の出題に変更することです。別の単元ではいえば、可能性がありそうなのは確率や一次関数でしょうか。いずれにしても過去問とは異なるタイプの出題となりそうです。

三平方の定理が使える問題は出題される?

ところで、仮に図形問題が出題されるとして、別解で三平方を使っても解ける問題が出題されるかどうかが気になります。おそらく、教育委員会として公表したからには、基本は三平方の定理を使わずに解ける問題で構成すると思います。また、三平方の定理を使って解けるとしても、そのほうが計算が面倒で、相似などを利用した別の解き方の方がオーソドックスであるという問題を出題してくるのではと予想しています。三平方の定理を使った方が簡単に解ける問題は出題しにくいでしょう。

英語

英語では中学で習う関係代名詞が全て出題範囲から除外されます。ちなみに、接触節が聞きなれない人もいるかと思いますが、いわゆる関係代名詞目的格の省略です。なので、関係代名詞が全て除外となります。英語も影響は大きいでしょう。そもそも入試上で出題される英語長文などを見ると関係代名詞(省略を含めて)を使っていない長文を探す方が難しいです。過去問でも文章中に普通に出てきます。今回、関係代名詞を除外すると公表したので、関係代名詞が文章中に出てこない文章しか扱わないことになるかと思います。ただ、英語で関係代名詞のような名詞を後置修飾する形容詞の働きはとても重要です。そうなると、分詞や不定詞の形容詞的用法など、代用できるもので書いている文章を使うことになるかと思います。特に分詞を扱う部分が例年以上に文中に多くなるのではないでしょうか。

社会

社会は公民分野の後半に出てくる『私たちと経済』の「国民の生活と政府の役割」、『私たちと国際社会の諸課題』が範囲外です。前者は社会保障や納税など、後者は国連など国際組織や、宗教などについてです。そもそも公民分野自体がこれから生活していく上で重要な内容が詰まっています。なので必要不可欠なものを学ぶことには違いないですが、入試だけでいえば、この分野が出題されないのでそこまで大きな影響はないでしょう。また、国際組織や宗教などは地理と内容が被っている部分もあり、この単元でやらなくても出題されてしまう分野と言ってもいいでしょう。そういう意味では影響は大きくないものの結果的に別の単元として出題される可能性は大きいとも言えそうで、別の単元でしっかり勉強することは必要です。

理科

理科は『運動とエネルギー』の「力学的エネルギー」、『科学技術と人間』、『地球と宇宙』の「太陽系と恒星」、『自然と人間』が範囲外となります。理科についても重要な部分が範囲外となっています。力学的エネルギーは高校物理にもつながっていきます。逆に高校になると地学選択が減るので、中学のうちに「太陽系と恒星」はしっかり学んでおくべきでしょう。ただ、理科の入試は3年間の全分野が出題されるということはなく、3年間の物理・化学・生物・地学からバランスよく出題されます。今回減少された範囲が出題されないというだけなので、影響はそこまで大きくないとは思います。唯一言えるのは、理科はどの分野から授業を進めるかが学校ごとに違う場合が多いです。中にはすでに習ってしまっている学校もあるかと思います。すでに学習した学校からすると、「入試で出ないなら別の分野からやればよかった」と感じるかもしれません。ただ、先ほど書いたように入試に出題されなくても、学校で学習するのは変わらないのでいつ学習するかはそこまで気にしなくてもいいかなとは思います。

受験勉強では過去問演習に注意が必要

今回の出題範囲の減少で注意しないといけないのが、過去問演習のやり方です。各科目で今年度の出題範囲とは異なる問題が過去に出題されている形になるので注意しましょう。ただし、上位層についてはあまり気にせずに勉強していって問題ないかと思います。

というのも、私立高校などはおそらく出題範囲の減少などは行わないかと思います。そもそも私立高校の場合、上位は中学範囲から逸脱している内容を出してくることがほとんどです。それを踏まえると、上位層の人は、今回の措置があっても勉強する内容は例年と大きく変わることはないでしょう。ただ、数学の図形問題は三平方の定理を必要としない問題を練習しておくといいです。なので、相似や円の範囲の図形問題を練習しておくとより良いでしょう。また、1〜2年生の範囲には影響はないので、2年生までの内容をしっかり復習するのも良いでしょう。

他の都道府県への影響は?

気になる点として、他の道府県への影響が考えられます。東京都がいち早く出題範囲の一部除外を決めたことで、他の道府県でも同様に範囲を減らす可能性があります。これについては各都道府県の教育委員会の発表を待つしかないですが、比較的入試時期が早い都道府県(神奈川県など)は、ひょっとすると追随する可能性も出てきます。ただ、先ほども言ったように上位層については、たとえ出題範囲が少し減ったとしても勉強すべき内容はほぼ変わらないので、気にせずに全部の範囲を勉強していけばいいかと思います。

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